日銀の金融政策のツケの責任は?

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出口論が語られないまま時間だけが過ぎていく

日銀が5年以上も行っている異次元の金融政策は、将来の地獄絵図を形成していっています。
私はずっと地獄絵図と表現してきていますが、地獄絵図とは「副作用」のことです。
ここ数年、それらについて多くの専門家から警鐘が鳴らされていっています。

専門家は「A」と「B」という感じで大きく二手に分かれます。
「専門家集団A」と「専門家集団B」がいたとして、「専門家集団A」が日銀の金融政策と同じことを主張するとし、「専門家集団B」はその逆とします。
「A」はきちんと説明をしない、というより言い訳ばかりなので、「B」の意見を見ていきたいと思います。

早川英男氏

富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェローの早川英男氏の著書『金融政策の「誤解」』(慶應義塾大学出版会)より

日銀の総裁も政策委員も国会の承認を得てはいるものの、国民から直接選ばれたわけではない。金融政策決定会合には政府代表も出席はしているが、それだけで国民の代表が議論に参加したというのは、かなり無理がある。そうなると、大袈裟に響くかもしれないが、QQEのような大胆な金融緩和の実施は民主主義の大原則に抵触する恐れがあると考えなければならない。

皆さんはこのことをどう思いますか?
何百兆円という国民の資産について、日銀の金融政策メンバーが決めていることについて民主主義ではないと言っているんですね。
鋭い指摘ですね。
書籍では、リフレ派「専門家集団A」に対して指摘しているところもありますので少しチェックしておきます。

リフレ派の困った議論①後出しジャンケン
 時間が経って効果が出ないとみるや、必ず「やり方が足りない」と言い出すのである。

リフレ派の困った議論②精神論

リフレ派の空想的楽観論
 リフレ派は先行きについても恐ろしく楽観的である。

いまの日銀はこの定義に当てはまっていますね。

【関連記事】
実験的金融政策の効果と限界

木内登英氏

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏の著書『異次元緩和の真実』(日本経済新聞出版社)より

日本銀行の「出口戦略」の3つの側面
 ①大幅な金融緩和状態を解消していく正常化策の「手続き」
 ②その正常化に着手する際の経済条件
 ③正常化に伴うリスクコントロール

中央銀行が何十年もかけて慎重に試すような実験的政策を、日本銀行は凄まじい勢いで試してきたようにも見える。その際に、非伝統的な金融政策について、その効果とともに副作用についても知見は乏しく、十分に検証、分析が進んでいないという点にどれほど配慮がなされたのであろうか。

数多くある副作用の中で最も心配しているのは、日本銀行による大量の国債購入策が、最終的に国債市場に過度のボラティリティ上昇をもたらし、金融市場全体の安定を著しく損なうこと、またその結果、経済に甚大な打撃を与えることである。
さらに2016年1月の「マイナス金利政策」導入決定によって、金融システムの不安定化が同様に経済と金融市場の安定を損なうリスク、長い目で日本経済をより弱体化してしまうリスクも明らかに増幅されたものと考えている。また、正常化の過程における短期金利上昇、あるいはリスク資産の価格下落がもたらす日本銀行の財務悪化が生じさせる政治的影響、通貨及び日本銀行の政策運営に対する信認低下も大きなリスクである。

仮に、現在の政策が、国債市場の大きな混乱を契機とするカタストロフィ(破滅)のような事態を回避できるとしても、そうしたリスクに絶えず怯えながら、異例の積極金融緩和政策の後始末、いわば敗戦処理に携わらなければならないという大きなつけを、後の政策当事者を含め、後世の人々に残すことになってしまうことを、非常に強く危惧している。

と語っています。

湯元健治氏

以前、ご案内した河村氏も上記2氏と同じような警鐘を鳴らしています。

そして、 早川氏、木内氏、河村氏が書かれた書籍と同じようなことが、わかりやすくまとめられていたレポートがでました。
株式会社日本総合研究所 副理事長 湯元健治氏の『日銀金融政策の功罪を検証する』(2018.5.8)
(リンク先で内容をご確認ください)

潜在的国民負担は、現時点でさほど大きくないが、日銀が大規模緩和の出口に向かう将来時点では、想像を絶する大きさになり得る。

ー中略ー

こうした悪影響を緩和するためには、出口戦略の実行を遅らせるか、あるいは、極めて時 間をかけて行うことしか手段がないが、その場合、現在のような超低金利が将来的に長期 化することは必至であり、その場合には、金融抑圧という形で預金者から国や企業などの債 務者に対して巨額の所得移転が続くことになる。これも、形を変えた国民負担だといえよう。

※金融抑圧とは、
高めの物価上昇率にもかかわらず、名目金利を低めに抑え、実質金利をマイナスにすることで債権者から債務者への所得移転を行うこと。そうすれば、たとえば預金者の犠牲によって政府債務の圧縮を行うことができる。(参照:『金融政策の「誤解」』)

日銀による新たな将来不安

国債はもちろんですが、日銀はいまもETFを買い続けています。
確信犯的に株価維持操作(PKO)をやっているのか、単なるマヒ状態でしょうね。
日銀がここまでやってもダメなのはわかりきっています。
『日本国民は、将来不安を抱えて生活をしています。将来というのは、国民自身が老後を迎えた際の生活です。』
しかし、日銀の金融政策は新たな将来不安「地獄絵図」を形成させていっています。
なんということでしょうか・・・。
同じ買うなら「年金」と「健康保険」を立て替えるような方法を考えるべきです。
そうでない限り、日本国民の消費行動は変わらないでしょう。
と同時に、日々普通に頑張っている国民の多くの生活はじわじわと苦しくなっていくでしょう。

政治がわかっていないのが根本原因です。



【関連記事】
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日銀VS普通の日本人
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コメント

  1. koskssjm より:

    初めてこちらのブログにコメントさせていただきます。
    積立投資記事についてよく読ませていただいておりますが考えがブログ主様と同意見でございます(ちなみに積立投資 ねずみ講で検索してこのブログを見つけました)。
    今回の記事に関してざっと読んだだけですが、安倍政権の経済政策について意見することはいいことだと思いますし、より良い経済政策について提案があるのであれば大歓迎ですが、専門家集団Bの方達の意見を見る限りでは批判や評論ばっかりで建設的な意見がないように思えます。
    安倍政権の経済政策より良い政策がない限りベストではないにしても
    ベターな政策ということですので、そうでないと言うことであれば安倍政権の経済政策より良い経済政策を出す必要があると思います。

  2. FPマネーネット代表 より:

    コメントありがとうございます。

    日銀の異次元金融緩和については、ある程度の年数と財源が使われていますのでまともな検証が必要だと思います。
    金融緩和が円安・株高を演出したことは事実として、最も重要な普通の国民の多くに恩恵がないのは、政権・日銀だけでなく、経団連(大企業のトップ)も内外の株主を見ながらの運営になってしまっているからだと思います。
    権力者・既得権益側との格差を演出したともいえます。

    金融庁がNISAで積立投資をすすめている話も業界側の主張とまったく同じになっていますね。
    それであれば、金融機関側にリスクと収益を取らせて、消費者側には1~3%の固定金利での資産形成ができる商品を提供すればいいだけなんですが・・・
    金融庁もアベノミクスに忖度していると思っています。^^;