アベノミクスではインフレになんてならない!?

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アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3政策を柱とし、これを「3本の矢」と称してデフレ経済からの脱却や、日本経済を本格的な成長軌道にのせることを目ざした。
大胆な金融政策では、日本銀行総裁に登用された黒田東彦(はるひこ)(1944― )が、2013年4月、金融市場へ供給するお金の量を大幅に増やす「量的・質的金融緩和(異次元緩和)」を断行し、2年程度を念頭に2%の物価上昇の実現を目標にした。

日本大百科全書(ニッポニカ)より

インフレ期待からはじまったアベノミクスですが、ほど遠い状況です。

昨日の読売新聞YOMIURI ONLINE(2017年7月13日)

日本銀行は、2017年度の物価上昇率の見通しを下方修正する方向で調整に入った。

景気回復で人手不足感が強まり、賃金は上昇しているものの、消費者の節約志向は根強く、価格に転嫁できない企業が多いためだ。4月に示した「1・4%」から、1%強に引き下げる公算が大きい。

日銀は、19~20日に開く金融政策決定会合後に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、最新の物価見通しを示す。

消費者物価の上昇率は、値動きの大きな生鮮食品を除く「総合」で、0・4%(5月分)にとどまっている。原油価格の上昇が一服していることから、今後も大幅な上昇は見込めない状況だ。

決定会合で投票権を持つ9人の政策委員(正副総裁と審議委員6人)の大半は、「物価が上昇していく基調は変わらないが、本格的な上昇には時間がかかる」との判断に傾いている。黒田東彦(はるひこ)総裁の任期である18年4月までに、目標とする「2%」を達成するのは極めて難しくなった。


インフレにもいろいろあります。
ディマンドプル・インフレ型とコストプッシュ・インフレ型です。
次の5つがインフレ・ストーリーでしょうか。
①需給
②円安
③カネ余り
④資源
⑤好景気

日銀のインフレ政策は、「デフレ脱却!持続的な2%物価上昇を目指す」という大義名分で、カネ余りにすることです。
(為替政策ではないと公言しています)
しかし、個人の家計はカネ余りになどなりません。
余ったのは銀行や投資事業者です。つまり、巨額なお金を操れる人たちです。
ですので、資産インフレとなったんです。
個人で喜んだのは、
・資産を保有している人
・経済人
ですね。

一方、大部分の国民の家計は一向に良くなりません。
つまり、収入が増えていきません。
なぜでしょう?
なぜ日銀がこれだけメチャクチャやっているのにもかかわらず、目指しているインフレにならないのでしょうか?
ある意味簡単です。

期待に働きかけるといって、やっていることが「株対策」だからです。

株価上昇
株価支え
株主重視

客観的にみて、日銀の政策、所謂国策が株のことを重視しているということがわかるからこそ、上場企業は、従業員の給料を上げるということよりも株主への還元に目を向けているんです。
企業経営者に対する国策メッセージの本質は、「賃金上昇」ではなく「株価対策」「株主重視」だったからです。
企業経営者(=勤務先の上層部、若手から見た先輩)らがそういう姿勢ですので、それを見ている20~50代の現役世代も同じような傾向になるでしょう。
伝染です。

2013年4月
 量的・質的金融緩和(QQE)・・・年間約50兆円
2014年10月
 年間約80兆円に増額
2017年3月末速報
 国債(割引短期国債を除く)保有残高日銀が最大に
  日銀40%、銀行22%、生損保21%、公的年金5.1%、年金基金3.2%

QQEによる期待インフレ率は0.5%程度でした。

挙句の果てに「マイナス金利」政策(2016年2月)です。
国民の”期待”に働きかけてしまいました。
金融に関しては、今と将来の不安です。
日本人には日本人の特性がある」にも書いていますが、日本人の金融に対する考えを考慮していません。
・預貯金金利の崩壊
・貯蓄性保険商品の予定利率の崩壊
・日銀のETF・J-REIT買いによるドーピング
・事実上の財政ファイナンス
・刻々と増大する社会保障不安
・将来やってくる消費税増税

2017年の物価上昇率目標を下方修正?
そりゃそうなります。
しかし、4年半もやってきて何の説明も責任もとらないから楽ですね。
(異次元緩和で2%未達なら責任とるって言った人もいましたけど)

日銀は2013年4月、「2%物価安定の目標を2年程度で」と宣言していましたが、
2016年4月、「2017年度中に」と変更し、
今回の「下方修正」となっています。

それでも
お金(資産)を持っている人たち(多くは権力側の立場にいる人となるでしょう)や株価を気にする人々(マーケット参加者や関係者)は、大いに支持することでしょう。

最後に、
『中央銀行は持ちこたえられるか』(河村小百合著、集英社新書)の著者が、その著書の最後の部分で強烈なメッセージを書いていますので、下記に引用します。

私たち国民が、もともと中央銀行の金融政策運営とはどのようなものかを、あまりよく知らずに暮らしてきたのをいいことに、「デフレ脱却」という「錦の御旗」のもと、中央銀行の金融政策運営と政府の財政運営との一体化という「事実上の財政ファイナンス」がこの国の根幹に、深く根を下ろしてしまっています。いつまでも「中央銀行はいくらでもお札を刷ればよいのだから、何をやっても大丈夫だろう」というレベルの認識でいるようでは、この国の先行きが本当に危うくなってしまいます。

私たち日本人は、相当前から「お上頼み」の気質が強い、と言われてきました。
しかし、残念ながら、この国の今の「お上」の実態はどうでしょうか。国の長期的な先行きなど何も考えずに、平気になってしまっているのではないでしょうか。もう「お上頼み」で平穏に暮らしていける時代ではなくなってしまったような気がします。にもかかわらず、この国では私たち国民以上にメディアが「お上頼み」になってしまっているような感がなくもありません。

~中略~

私は、この国の施政者の方々、当局者の方々に問いたいと思います。
皆さんに、ご家族はおられないのですか。
ご自分のお子さん、お孫さん、そして、この国の子どもたち全員に、これからこの国が財政と経済の営みをどうやって続けていくことができるのか、堂々と胸を張って説明できますか。
この国の国民に対する使命感、子どもたちの将来に対する責任感はないのでしょうか。
今のままの政策運営がこのまま続けられてしまったとき、遠くない将来のいずれかの時点で、日銀の金融政策運営がコントロール不能となる可能性が高いのではないかと私は思います。そのような状況に陥ったとき、過去の経験を振り返れば、国内外の経済・金融情勢の「ごくありふれた」という程度の変化にもついていかれなくなりかねないと思います。
その結果、この国全体の経済の営みに、一億の国民の生活と人生に、大きな打撃が及ばざるを得なくなったとき、施政者の方々、当局者の方々は、まるで大地震か大津波のような天災にでも突然、襲われたかのように、「想定外の事態が発生してしまいました」と言い訳するのでしょうか。
私は、それは違うと思います。
少なくとも、主要先進国では、どこの国の当局者も、先行きのそのような情勢変化に対応できるように常に考えて備えつつ、日々の政策運営を行っています。
「”今”のためなら、この国の将来がどのように犠牲になってもよい」「このまま国内外で、ずっと”ゼロ金利”もしくは”マイナス金利”状態が継続する以外の状況は、現時点ではすべて”想定外”だ」などという言い訳は、この国の将来に向かって、決して許されるものではない、と私は考えます。

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