平成22年10月、金融サービスの利用者を保護するために、「金融ADR制度」が導入されました。
金融商品販売業者には、説明義務を果たさなかったために顧客に損害が生じた場合には、顧客に生じた損害の賠償責任を負うことが、金融商品販売法第5条に明文で規定されています。
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金融ADR制度
パンフレット
政府広報オンライン
指定紛争解決機関一覧
ADRとは
Alternative Dispute Resolutionの略称。
私的紛争の当事者が、中立・公正な第三者のサポートを受けながら、裁判よりも緩やかな手続きにより事実の把握と法的評価を行い、非公開で話し合うことで紛争を解決する制度です。
ADRのメリット
申し立て手続きが手軽で解決が早い。
手続き費用は各ADRで異なりますが、金融ADRは、利用者が負担する手続き費用が軽減、免除される仕組みなっています。(大きな特徴)
金融ADR
金融取引について、利用者保護の充実・強化を図るために、平成22年10月に開始されました。
誰でも金融ADRを利用できるのか
金融取引の当事者であれば、原則として誰でも金融ADRを利用して苦情の申し出や紛争解決の手続きの申立てをすることができます。
金融ADRのメリット
金融事業者には次の三大義務が課せられています。
①応諾義務・・・金融事業者は手続きを拒否できません。一般のADRは相手方の不応諾が多い。
②説明義務・・・一般の金融紛争のADRや裁判では、利用者の言い分を証明する証拠がないため、利用者の主張は聞き入れられないケースが多く見られますが、金融ADRには、金融事業者に対して資料提出義務を含む事実関係を説明しなければならないとされていますし、金融事業者は帳簿書類の提出も拒否できません。
③受諾義務・・・金融事業者は、紛争解決委員の示した「和解案」を尊重しなければならない。
このように、金融ADRでは一般のADRにはみられない強力な義務が、金融事業者にのみ片面的に課せられています。
ですので、双方納得づくの和解が成立しやすい。
金融事業者が期日に出てこない場合は
原則、欠席できません。
集団で金融ADRの申立てをすることはできるか
可能です。
集団による申立ての利点は複数の被害者が集まって申立てをすることにより、それぞれが持っている証拠を全員が利用することができ、被害者にとって有利な解決がなされること、また、少額事件も集団化することにより、まとまった金額になり、相手方に対する事実上の説得力になることなどがあげられます。
金融ADRを利用する際、代理人は弁護士でなければいけないか
弁護士資格を有しなくても、法律上の代理権を持っている人(親権者、未成年後見人または成年後見人)や認定司法書士(140万円を超えない訴訟)は可能。
弁護士会の金融ADRの特色は
弁護士会の金融ADRは、
①利用者保護を図るため、金融事業者との協定により金融事業者にADR手続きに応じる三大義務を課して指定紛争解決機関のある場合とのバランスを図っていること
②あっせん人が金融紛争のベテラン弁護士の中から公平に2~3名選任されることで専門性、公平性が特別に配慮されていること
③遠隔地にある当事者の便宜のため、遠隔地あっせん制度が設けられていること
④手続きの運用が柔軟なのでとりわけ早期解決に適していること
などが特色です。
金融ADRの対象となる苦情と紛争とは
金融業務全般(銀行業務・金融商品取引業業務等)に関するもので、多種多様なものが広く想定されています。
金融ADR制度は、これまで裁判では訴えても審理することすら認めてもらえなかった紛争を対象とすることができます。
例えば、金融事業者の行為が必ずしも法令に反するとまではいえない場合でも、道義的責任を問うことが認められる可能性があります。
*保険金を受け取ったけど、金額が契約金額よりも少ない
*金融商品購入の契約時には元本毀損の説明はなかった
*セールスマンを信じて、外国の投資信託を購入して大損した
*その他
証拠が不十分でも大丈夫か
ADRは、証拠によって厳密な事実認定を行う裁判とは違い、両者の話し合いを通じて紛争の解決を図る手続きで、証拠は話し合いのひとつの要素にすぎないものと位置付けられています。
金融ADRでは、利用者保護のため、金融事業者が説明義務および資料提出義務を負担しており、利用者のもとに十分な証拠資料がない場合には、あっせん人を通じて金融事業者に対し、金融取引の経緯についての説明およびそれに関する資料の提出を求めることにより、公平な解決を目指す仕組みになっています。
言い換えれば、金融事業者は自己に不利な資料であっても開示しなければならないということです。
金融事業者が資料提出を拒んだ場合は
紛争解決機関との間の契約違反になり、金融事業者名と資料提出拒否の事実が公表され、内閣総理大臣に報告されます。
説明義務とは
金融商品販売の場面においては、金融商品販売業者等が、顧客に対し、重要事項について説明しなければならないことをいいます。(金融商品販売法第3条第1項)。
そして、その説明は「顧客の知識」「経験」「財産の状況」および当該金融商品の販売にかかる契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法および程度によるものでなければなりません。(金融商品販売法第3条第2項)。
適合性原則
ふたつの意味があり、
「ある特定の利用者に対しては、どんなに説明を尽くしても一定の商品の販売・勧誘を行ってはならない」
というルールをいう場合もあります(狭義の適合性原則)。
ただ、金融ADRで問題となるの金融商品取引の場面においては、適合性の原則とは、金融商品取引業者等が
「金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、または欠けることとなるおそれ」
が
「ないように、その業務を行わなければならない」
ことをいいます(広義の適合性の原則、金商法第40条第1号)。
金融実務に精通した弁護士が担保されている
金融ADRでは、金融の専門家がトラブルの解決にあたることが制度上担保されています。
他方、訴訟による場合は、制度上担保されていません。
手続きの終了について
手続きが終了する場合としては、話し合いがまとまる場合の和解成立による終了です。「和解の成立または不成立」
和解書が作成されます。
和解ではなく、あっせ人の判断によろ紛争を解決する「仲裁判断」。
「却下」。
利用者はいつでも「取り下げ」できます。金融事業者は利用者の同意がなければ取り下げできません。
金融事業者が受諾義務を負う「特別調停案の受諾」。
などがあります。
第三者に情報が漏れることは
手続きは原則非公開で行われますので、情報漏れや資料の閲覧もできません。
申立書には何を添付すればよいか
契約書やパンフレット等。
フィンマックとは
(注)FINMACフィンマック とは、Financial lnstruments Mediation Assistance Centerの頭文字の略称。
証券・金融商品あっせん相談センター(略称:FINMACフィンマック)は、株や投資信託、FXなど金融商品の取引に関するトラブルについて、ご相談や苦情を受け付け、公正・中立な立場で解決を図る機関です。相談・苦情処理で利用者の納得が得られない場合の制度として、弁護士による紛争解決のためのあっせん制度も運営しています。
フィンマックは、日本証券業協会など法律に基づく5つの自主規制団体の連携・協力の下に運営されている機関であり、金融庁や法務省から認証を受けています。
証券会社などの金融商品取引業者・金融機関が行った金融商品取引に関するトラブルの解決には、法律により、外部の第三者 機関を利用することができ、フィンマックはそのような機関のひとつです。
「フィンマック」詳細はこちら
『解決できる!証券・銀行・保険のトラブル Q&A金融ADR活用ガイドブック』
著者:東京弁護士会 弁護士業務部 金融紛争研究会
発行所:日本加除出版株式会社