ミスリードで確定拠出年金を説明する投信会社トップの残念さ

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前回の続きです。
PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)で
「確定拠出年金を預貯金か保険で構成」退職時、老後資金の少なさに愕然とする人の特徴
セゾン投信・代表取締役会長CEOの中野氏の記事です。

今回指摘しておきたいところは、確定拠出年金制度についての見解です。

残高の半分以上が預貯金あるいは元本確保型保険という中身を見ると、本来のDCにおける制度主旨への理解が正しく浸透しているとは到底言い難いのが現状です。実際金融機関でも、「イデコは節税メリットがこんなにお得」という類いの誘導で説明されることが多く、制度目的をきちんと伝える努力が足りないとも感じています。

もちろんDCは年間拠出金額が全額所得控除の対象となることから、各人の拠出金に対する所得税率分が還付される経済的メリットは大きいわけですが、当該制度主旨はその枠内でしっかり運用を続けることにこそあるのであって、むしろ所得控除は制度に付与されたおまけというくらいに理解してほしいのです。

ちなみに2022年度から、「イデコ」は65歳まで拠出可能期間が伸び、それ以後も75歳までは継続して制度内運用が可能で、その間に積み上がった運用益が全額非課税となることのほうがはるかに重視すべき経済的恩恵であると考えるべきです。

(出典)PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
「確定拠出年金を預貯金か保険で構成」退職時、老後資金の少なさに愕然とする人の特徴


どう感じましたか?
確定拠出年金というのは、「商品」のことではなく「制度」のことです。

そしてそれは、
>「イデコは節税メリットがこんなにお得」
との言葉通り、税制面でのメリットがあるということが「制度」にあたります。

彼自身、
>運用益が全額非課税となることのほうがはるかに重視すべき経済的恩恵であると考えるべき
と言って、税制面でのメリットである「制度」についてアピールしています。

しかもいつものように
>運用益が
と断定的判断の提供と解釈されても言い訳できないことを言いながら。

確実なおまけVS不確実な運用益

この制度にある所得控除メリットを”おまけ”と表現していることには驚愕しますね。
ここで”おまけ”について確認しましょう。

【前提】
35歳男性、年収300万円(65歳まで変わらず)、ずっと独身として、賃貸住宅として
確定拠出年金30年間*(拠出額月額23,000円)
*2020年法改正考慮

所得税・住民税の税制メリット 約130万円(30年)

いかがでしょうか。
年収300万円がずっと固定として、約130万円の税制メリットになります。
これがおまけですか?

他方、彼は
>拠出総額828万円が30年後に1500万円超にまで育ち、その拠出額との差額にあたる源泉所得税(現状20%)が課税免除される予定です。要するに長期投資による果実を丸ごと享受できる効果は実に大きく、制度内でしっかりと長期運用を継続することが大目的であることを理解できるはずです。

彼の断定的判断をベースにした「運用益:約630万円」の税制メリットは「約130万円」です。
この130万円(不確実)は絶賛し、拠出時で得られる130万円(確実)をおまけと言うにはあまりにも「?」です・・・
つまり、彼は
とにかく誰も彼もが自分の投信会社に直接的間接的に恩恵を受けることができるように投信にお金を入れてほしい
というだけのポジショントーク全開のミスリードをしていることがわかります。

トウシ趣味村でしか生活をしていないからそれ以外の人たちの生活や考え方を知らないのでしょうが、それであればまずは断定的判断の提供をしてはいいけないという法令遵守を心掛けた方がいいですね。

そのほかに書かれている内容もツッコミどころがありますが、今回はここまでにしておきます。
それにしても残念です。

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