経団連「雇用増は賃金の低い業種、賃金上昇の大半は税と社保に消えている」

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過去4年間、賃金引き上げをしてきたのに、個人消費がふるわないのはなぜなんだ!?
というテーマで分析された経団連のレポートのご紹介です。
経済政策部会報告書「個人消費低迷の分析と今後の対応」
(日本経済団体連合会、2017年10月23日)

詳細はリンク先でご確認いただくとして、いくつか引用(枠内)しておきます。

相対的に賃金が低く、かつ上昇が見られない業種を中心に雇用者が増えていることも、一人当たりの雇用者報酬の伸び悩みに影響している
雇用者報酬から社会保険料や税等を差し引いたマクロ経済の可処分所得の動向を直近4年間(2012~2016年度)でみると、賃金・俸給、財産所得(ネット)が9兆円程度増える一方で、税や社会保険料の負担が5兆円強増えたため、可処分所得の伸びは4兆円程度にとどまっている

これは多くの日本国民が肌で感じていることでしょう。
「給料あがってねーし」
「懐あったかくねーし」

非正規雇用者の比率は、2002年の約25%から、リーマンショックを挟む14年間で、2016年には約38%まで上昇している
正社員と非正規雇用者の賃金格差(時給ベース)は、年齢とともに拡大している

非正規雇用とは、「パート」「アルバイト」「契約社員」「派遣社員」「嘱託」を指します。

1999年と2014年の2時点で比較した、60歳未満の世帯年収の構成比は、800万円以上の比率が低下する一方、500万円未満の比率が高まっており、下方にシフトしている

現役世代の消費動向ですが、とにかく社会保険料負担の増大で賃上げの効果が減殺されています。
35歳前後の10年間の累積年収の推計として、氷河期時代(2015年時点で35~39歳)はバブル世代に比べ、約600万円減少しているとのことです。
勤労者世帯は消費よりも貯蓄に重きを置いている感じです。

高齢層(60歳以上)の世帯年収の構成比を1999年と2014年の2時点で比較すると、高い層の比率が低下する一方、低い層の比率が高まっている
有価証券を保有する世帯の消費支出額は、非保有世帯を1か月あたり約6~9万円程度上回っている。2012年から2015年の3年間の動向を見ると、有価証券を保有する世帯は消費支出の下げ止まりが見られる一方、非保有世帯では減少傾向が続いている

これでわかりますね。
高齢者で投資をしている人たちは、余裕資金で趣味や道楽レベルで行っているのでしょう。
道楽している高齢者に、「別にお金なんていらねーし」って心で思っている高齢者に、勤労者世帯は必死に社会保険料を負担していっているということになりますね。
(T△T)

レポートの終りの方に、個人消費喚起を側面支援する環境整備として企業の取り組みのひとつに、次のことが書かれていました。

企業型確定拠出年金における運用改善の取り組み(主に商品提供数の見直し、商品の示し方の工夫、継続投資教育の実行)、つみたてNISAの従業員への周知等、従業員の資産形成の充実に向けた環境整備や情報提供を積極的に進めることが求められる。これらの活用が進み、過度な将来不安が軽減されれば、消費マインドの改善も期待出来るものと思われる

こういうのを読むといつも思います。
「厚生年金基金どうしたの?」
「適格退職年金どうしたの?」
金融機関と企業が”仕事中”に一生懸命取り組んでいたものが崩壊したのに、消費もできない勤労者に何を期待しているのでしょうか?
国や企業が確定拠出年金、NISAなどを必死にすすめることが、将来不安に輪をかけているのではないかと思います。
なぜなら、
このレポートにもあるように
20~40代では、低所得層を中心に、社会保障制度に対する不安よりも、所得・雇用に対する不安が強く、50代の場合、一部の高所得層を除き、社会保障制度に対する不安が全般的に強いです。
それは、
「そもそも今使えるお金をもらえていない」
「将来使えるお金も心配だ」
と言っていることであり、
普通の勤労者がそのように思ってしまう国にしてしまったということではないでしょうか。

・・・・・・・・・
消費マインドなんて改善されないでしょう。

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