投資情報で得をする唯一の関係者は(投資信託)

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今回もまた前回の記事で引用した
『人はお金だけでは動かない』(ノルベルト・ヘーリング/オラフ・シュトルベック著、NTT出版)
という書籍からの話です。

市場経済の暗がりでという章に、「投資信託はどうやって評判を買うか」という節があります。
そこを引用しシェアします。

オレゴン大学(現在はボストン・カレッジ)のジョナサン・ロイターと、スタンフォード大学(現在はダートマス大学)のエリック・ツイヴィッツのふたりは、アメリカの有力な5つのメディアが株式投資信託をどう報道しているかを分析した。主眼を置いたのは、投資信託の販売会社が多数の広告を出す見返りに好意的な待遇を受けるか、という基本的な疑問だ。金融業界に焦点をしぼったのは、ほかの業界よりジャーナリズムの偏向を証明するのに適しているからだ。ほかのさまざまな商品と違い、株式投資信託の品質は事前にでも後日振り返ってでも客観的に判断できる。分析の対象は、新聞の『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、投資家向け雑誌の『マネー』紙、『キプリンガーズ・パーソナル・ファイナンス』誌、『スマートマネー』誌だ。投資信託の広告費のほぼ半分がこの5つの刊行物に流れている。

ふたりは、1997年から2002年のあいだに5つの刊行物のそれぞれに割り当てられた広告の量に関するデータを入手した。また、各紙誌が個々の投資信託について肯定的に伝えているか否定的に伝えているかも評価した。結果は驚くべきものだった。

新聞の場合、社説と広告の内容の区別は保たれているようだ。『ニューヨーク・タイムズ』紙にも『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙にも、どのようなジャーナリストの偏向も見つからなかった。

しかし、投資家向け雑誌は事情が違う。『マネー』『キプリンガーズ・パーソナル・ファイナンス』『スマートマネー』各誌では、企業の広告の量と、その企業の商品が投資家に推奨される確率とのあいだに強い相関関係が見られた。たとえば、『マネー』誌の場合、前年に100万ドル分以上の広告を出した企業の84%が、上位100投資信託リストに名を連ねていた。まったく広告をださなかった企業は、わずか7%しかリストに登場していない。

この相関関係は、これ自体が邪悪な何かを連想させるわけではない。たんによい投資信託のほうが頻繁にメディアに取り上げられ、ゆえに人気も高いというだけかもしれない。そこで、それぞれの投資信託について、過去の運用実績、課金される事務費、格付けにもとづいて品質を吟味した。ふたりは数式を開発し、この品質基準にのっとった場合、どの投資信託が推奨されるかを決定した。すると、『マネー』誌がさかんにすすめる100件の投資信託のうち8,9件は、その販売会社がたくさんの広告を出しているからリスト入りしたにすぎないことがわかった。『キプリンガーズ・パーソナル・ファイナンス』誌と『スマートマネー』誌でも同様の傾向が見られた。

次に、投資推奨に従った投資信託の顧客が平均以上の利益を得たかどうか調べたところ、「肯定的に書かれていても、将来の利益の予測にはほとんど役に立たない」ことがわかった。ただし、その理由は重要な広告主が特別待遇を受けているからではなく、5つの刊行物が投資信託の推奨銘柄を選ぶのに間違った基準を採用しているからだ。この研究によると、過去の実績を重視しすぎ、事務費をはじめとするほかの重要な要素をあまりに軽視しているという。

つまるところ、投資情報で得をする唯一の関係者は、投資信託を販売している会社だけだ。ふたりは、特定の投資信託について肯定的な報道がなされると、その後12か月にわたってかなりの資金が流入することになると指摘している。

アメリカでの話ではありますが、多くの方は気づいている話ですね。
日本でも同じだということを。
この手の話として大きく頷けるのが、巷で無料で行われている「マネーセミナー」「投資系セミナー」です。
主催者問わずです。^^
そこでの話やそのあとのコンサルという名の勧誘、まあわかりやすいですね。

投資情報で得をする唯一の関係者。

この書籍は2012年に発行されているものですが、今後、ここで指摘されているようなマネー本だけではなく、個人ブログ等も同じ傾向になっていくでしょう。

情報はタダ(無料)

だと思っている人たちがわんさかいるからです。
ただ・・・
投資情報について、ロックインされている人たちが増加しているのは危険なところです。

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