「年金が少ない」と言っている高齢者たち
この高齢者たちの言葉を現役世代はどのように受け止めていけばいいのでしょうか?
このようなことを言っている高齢者の共通点は、”老齢基礎年金”のみの受給者だということです。
老齢基礎年金、つまり「厚生年金」でも「共済年金」でもなく「国民年金」ということです。
老齢基礎年金の満額は、年間772,800円(平成26年4月~)です。
ひと月64,400円。
確かにこの金額”だけ”では今の日本で暮らしていくには厳しいものがあるでしょう。
では、この77万円の年金を得るために彼らが支払ってきた国民年金保険料はいくらなのでしょうか?
結論から言うと、約470万円です。(1974~2013年までの40年の累計)
月平均9,800円。
このようなことを言うと、すぐ
「40年前の貨幣価値は今とは違う!」
とか物知り顔で言う人がいます。
昭和50年の国民年金保険料は「1,100円」で、その時のサラリーマンの平均年収は約205万円で厚生年金保険料率は約10%(労使分)です。
平成24年の国民年金保険料は「14,980円」で、その時のサラリーマンの平均年収は約473万円で厚生年金保険料率は約約16・7%(労使分)です。
きちんとデータを分析していくと、過去40年間の国民年金保険料負担はとてつもなく楽だったと言ってもいいでしょう。
よく損得で話をする人がいますが、上記のケースで見ると、実際「7年」受給するとあとはず~とプラスですね。(一生涯受給)
そのプラス年金分は誰が負担しているのでしょうか?
年金の原資は、もちろん多くは現役世代の人たちの保険料からです。(現在、基礎年金の原資の半分は税金)
こう言うと、
「じゃあ、6年以内に亡くなったら損じゃないか」と言われる人もいると思いますが、それなら多くもらいすぎた場合はすべて返金しないといけないでしょうね。
自分たちに都合良すぎる考え方は問題です。
この時点で、老齢基礎年金受給者が「年金が少ない」「年金だけでは暮らしていけない」と言っているのは、あえてキツイ言い方ですが”戯言”だと言ってもいいでしょう。政治家や官僚は建前しか言えませんが、これが本質です。
けっきょく、年金以外に自分自身で老後資金を準備をしてきていたのかが問われるところです。
たとえば、
*国民年金基金
*預貯金
*個人年金保険(定額の貯蓄性保険等)
等々
いまの高齢者には受益者負担の原則を”教育”しないといけない
いかがでしょうか?
老齢基礎年金の事実を知っていただければ、
「年金だけでは生活できない」
と言っている高齢者には「そうなった理由を聞かせてください」と問いかけるのが先ではないでしょうか。
何といっても、日本の金融資産の大部分は60歳以上の高齢者が保有しています。
その高齢者の社会保障の多くを負担しているのは金融資産を持っていない現役世代だということです。
いま問題の社会保障、「年金」だけでなく「健康(介護)保険」もあります。
特に、医療費(健康保険)については、高齢者にもきちんと受益者負担を求めていくべきでしょう。
政治は「票」しか見ていない、本質の仕事をしていないといえるでしょう。
生命保険の予定利率からみてもわかる
預貯金金利でなく、生命保険の予定利率からもわかることがあります。
生命保険の多くは長期の固定金利契約商品となります。
いま65歳で年金受給開始の人たちが、35歳のころの保険の予定利率は「約5~6%」(大手生保)もありました。45歳のころでも「4%超」。
そのころに、きちんと定額の貯蓄性保険である「年金保険」「終身保険」「養老保険」に加入していれば良かったと思います。
現実、その頃の「年金保険」商品なんて払った保険料の3倍にはなっていたものもあります。
つまり、単に”準備不足だった”ということがわかります。
この時点でも、老齢基礎年金受給者が「年金が少ない」「年金だけでは暮らしていけない」と言っているのは、”戯言”だと言ってもいいでしょう。
資産形成には順番が大切
私は、日本人の資産形成には順番が大切だと言っています。
その順番とは、
①「仕事」②「公的年金」③「堅実・確実なもの」④「確定拠出年金」⑤「投資信託等」
「年金が少なくて暮らしていけない」と言っている高齢者は、①はもちろん、②と③をきちんとしてこなかったか、或いは投資で失敗したのではないでしょうか?
現役世代は、そういう事実をきちんと指摘し、把握していかないと、自分たちの将来は危うくなるでしょう。
そもそも国民年金だけの高齢者には”ストック資産”はないのでしょうか?
年金不安を煽られて①~③をきちんと構築せずに、よくわからない金融(投資)商品に投資をしていくと、きっと販売業者側だけを儲けさせ、自分は後悔してしまうことになるのではないでしょうか。
私の個人的調査によると、金融商品販売業者(特にサラリー生活者)の年収は、投資をする側(特にサラリー生活者)の年収よりも圧倒的に高くなっているケースが多いです。(高所得者のサラリーのために低所得者が投資をしている)
また、金融商品販売業者の個人金融資産よりも投資をする側の個人金融資産のほうが圧倒的に多いケースがあります。(ストック資産の多い人が投資をしている→道楽的な意味もある)
それはどういうことか?
そもそも、相談する相手を間違っているのではないでしょうか?
ライフプラン表・キャッシュフロー表を作成するのが先です。
年金を払っていない若者たちの末路
多くの真実を棚に上げて、またはあえて指摘されないように「国民年金は少ない」とか言うことで、高齢者自身や政治家、メディア、金融商品販売業者がミスリードをしていくのはいかがなものでしょうか。
そのようなミスリードにより、国民年金保険料を払わない若者が増加しています。
その若者たちの将来の老後資金の準備は、大きく次の2つではないかと思います。
*起業や親からの相続で莫大な資産を蓄える
*生活保護”年金”に頼る
将来、年金保険料を払わずに高齢になった(それだけでなく障害年金や遺族年金でもそうですね)、つまり年金保険料を払わないということを選択し、それがない(少ない)ことにより経済的に厳しい生活になって(格差が生じて)しまった人は、他人(払ってきた国民)にその尻拭いをさせるようなことだけはやめてほしいものです。
そしてきちんと払っている国民は、他人(払っていない国民)に搾取されることがないように政治やメディア等の情報を見ていくことが必要ではないでしょうか。