私は、マネーセミナーや書籍、ネット上でのFP資格保有者の発言等による投資をすすめる情報は、業界でつくられたものだと思っています。
この私の考えと似たことが書かれている記事を見かけました。
近藤駿介氏 BLOGOS
『アベノミクス最後の砦を守るために日経が動員をはかる「NISA」と「GPIF」』
今回、この記事で書かれていた内容をご紹介させていただきます。
確定給付年金から確定拠出年金へ移行していった経緯
今や年金制度は不安の元凶になりつつありますが、以前は、老後の「資産形成」の主役は、一定の給付を受けられる「確定給付年金」でした。しかし、1990年からのバブルの崩壊に伴い、多くの企業年金では制度の維持が難しくなり、401Kプランなど掛け金を一定のとし給付は結果次第という「確定拠出年金」に変って行きました。運用で、安定的な収益を確保することが出来なくなったからです。
証券業界で、いち早く「確定給付年金」制度に見切りをつけ「確定拠出年金」へと移行したのは、大手証券会社でした。大手が抜け出し中小証券会社だけが参加する形になった基金の資金規模は急減し、基金を維持して行くことが困難になりましたので、業界全体として401Kという「確定拠出年金」に移って行くことになりました。
もし、「株式や投資信託を購入」することが「資産形成に役立つ」のであれば、何故、大手証券会社はいち早く「確定給付年金」から脱出したのでしょうか。証券業界の年金基金の運用を主に担っていたのは、当然の如く、大手証券会社系の運用会社でした。つまり、「株式や投資信託を購入」するだけでは、「資産形成」が難しいからです。業として「株式や投資信託を購入」して来た証券会社が、「資産形成に役立つ」ことは難しく、自らの将来の年金資金運用を託すことが出来ないと判断して止めた「株式や投資信託の購入」による「資産形成」を、今になって個人投資家に勧めるという神経は、なかなか納得がいかないものです。
つい2年ほど前まで、実に10年という長い年月をかけて、多くの企業は退職金制度において「適年からの移行」に大変な労力(時間と莫大な費用)をかけてきました。
知る人ぞ知る、大きな問題でした。
これは、国がいつものごとくその時々の都合で変更を決めた税制の影響がありましたが、”本質”は違います。
本質は、古き良き時代に作られた「退職金規定」による退職金倒産が起こることが想定されたからです。
古き良き時代とは、想定利回りが5.5%で設定されていた、という時代です。
この5.5%、確定給付型の適年(適格退職年金)には大きな”積立不足”が発生することになったのです。
この5.5%で実際に運用しないといけなかったのは、退職金制度を作成した一般の企業ではなく、当然、上記で指摘されている「証券会社」や「信託銀行」「生命保険会社」等の金融機関です。
しかし、彼らは今で言うところの”自己責任”ということを前面に押し出し、運用の利回りを保証していたわけではなかったのです。
5.5%は金融機関から一般企業に対して約束されているわけではありませんでしたが、従業員への退職金としの原資としては「退職金規定」で約束されていました。
つまり、利回り通りにいかなかった責任は企業側だけにあったというわけです。
当時の金融機関に踊らされた(踊らされて「退職金規定」に5.5%運用を前提としてしまった)企業は、のちに(ここ数年~現在に至るまで)大きなダメージを負うことになりました。
5%の利回りが個人でできると言うファイナンシャルプランナーたち
まず、この5.5%という想定利回りをどう思われますか?
日本の大手金融機関は、ギブ・アップした数字です。
この5%ほどの利回りを、いつも言っていますが、FPのマネーセミナーではできると言っているのです。
もちろん一時的にはではなく、長期的に。
彼らはどれだけ素晴らしいのでしょうか?
しかし、実際に運用するのは彼らFPではありません。投資信託です。
適年の問題を個人の生活にあてはめた場合にどういうことになるのか。
5%の運用なんて平気でできると言っている彼らは、適年の問題すら知らないのでしょうか?
それとも・・・
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
カモにさせるために加工される業界の情報
日本を代表する経済紙は、「金融機関は口座開設を勧めるだけでなく、セミナー開催などの機会を増やすなどして、若い世代に投資への理解を広げる努力を続けていってほしい」と主張しています。しかし、「株式や投資信託を購入」を「資産形成に役立つ」ように出来なかったどころか、いち早く諦めた業界の人達が、どのようにして「若い世代に投資への理解を広げる」ことが出来るというのでしょうか。
2012年までの株価下落によって、厚生年金基金制度は維持できなくなり、多くの企業年金も「確定拠出年金」などに移行を強いられて来たのはご存知の通りです。忘れてならないことは、こうした年金基金の資産運用を委託されていたのは、大手の信託銀行と生命保険会社、さらには国内外の投資顧問会社だったということです。こうした運用会社の、所謂ファンドマネージャーと言われる人達は、24時間、365日、経済や金融市場を分析し、それに基づいて投資をして来たプロの投資家です(建前上ですが)。
こうしたプロの投資家でも、「株式や投資信託を購入」することで「資産形成」をすることが出来なかったからこそ、日本の年金制度は崩壊の危機に直面しているのです。こうした現実を無視して、「資産形成に失敗」し、年金制度の崩壊の危機を招いた金融機関の人達に、「セミナー開催など」で「若い世代に投資への理解を広げる努力」を求めるというのは笑い話にもなりません。
プロの投資家が失敗したやり方を、アマの投資家に繰り返させることで、NISAを「定着させる」という主張には、大きな抵抗を感じます。
株価のために利用される私たちの公的年金
「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、日銀の追加緩和に合せて、運用改革を発表するという観測が出ている。市場では日銀が追加緩和を決めるのは、7~9月との見方が多い。同じ時期にGPIFが国債比率を下げ、株式比率を上げる資産配分の見直しを発表すれば、緩和効果が高まるからだ」(7日付日本経済新聞 「風速計~追加緩和、年金運用改革とセット?」)
日本の年金が不幸であったのは、こうした記事に見られるように、常にその資金が「株価を押し上げる道具」として使われて来たことです。政府が120兆円という巨額の公的年金資金を運用していることに対して批判も上がる中、政府が公的年金の運用を続けるのは、政権の意向を受けて市場介入資金として利用出来ることも一つの大きな要素だと思います。
今回も、既に消費期限切れを迎えたアベノミクスの効果が継続しているようにお化粧するために、公的年金の資金が使われようとしています。
嘆かわしいことは、日本を代表する経済紙が、「株価が上昇すれば、年末に消費増税の引上げを判断する官邸や財務省には好都合だ。最も政府が6月に発表する成長戦略にGPIFの資産配分見直しを盛り込む意見もある。GPIFや厚労省は『株価を押し上げる道具ではない』と口をそろえるが、発表時期一つとっても風圧は日増しに強まっている」と、公的年金資金をアベノミクス効果のお化粧に利用することを推奨していることです。制度が始まってから3ヶ月経ったこのタイミングで、NISAを「定着をはかっていかなければならない」という社説をけいさいしたのは、4月からの消費増税による経済の落ち込みが、想定以上になる可能性を感じて来たからかもしれません。景気が回復していると言い訳するための唯一の材料が「堅調な株価」になりつつなるなか、どうしても株価だけは維持しなければならないという焦りがあるのかもしれません。
ともかくも、一般投資家が「株式や投資信託を購入」することで「資産形成」を目指す際に最も重要なことは、政府や証券業界などと「same boat」に乗っている新聞の主張を鵜呑みにしてはいけないということのようです。
タラレバばかりの投資をすすめる世界
相変わらずなのは、
「過去10年、このように分散投資をしてきていたならば・・・」
「過去20年、積立投資をしていたならば・・・」
ということで、過去の各市場の指数を使ったシミュレーションを表示して「こうしていればこうでしたよ(※将来を約束するものではありません)」ということを説明している新聞や雑誌、資料、セミナーがあります。
もういいかげんに反省してはどうかと思います。
低レベルを通り越して詐欺師まがいだとも思ってしまいます。
投資の世界です。投資の世界は先が見えない、結果がわからない世界です。
そこに大きなリターンがある世界です。
そのようなことが言えるなら、競馬でこうしていれば、パチンコでこうしていれば、電化製品でこうしていれば、受験でこうしていれば、住宅購入でこうしていれば、等々なんでも言えます。
(タイムマシンの世界か!)
本当に必要なのは、実際に投資をしてきた人々の多くの生の結果(データ)です。
千人分ぐらいのデータは必要でしょう。
一つの団体(販売会社)であれば、100人でもいいでしょう。
人間はロボットではありません。
投資だけが人生ではありません。
そして、いつも平静でいられるわけではありません。
そのような”実際の様々な生活”をしている人たちが、それぞれ長期間投資をしてきた”実際の結果”が大切なのです。
机上論はまったく必要ありません。
過去の指数を利用したデータなんて何の意味もありません。
最低限、そのデータを説明する人たち・・・
*新聞記者
*雑誌記者
*経済評論家
*ファイナンシャルプランナー
*金融マン(銀行の窓口女性含む)
最低限、この人たちは過去の自分たちの投資実績を披露するべきでしょう。
おそらく「全く投資をしたことがない、していない」人たちが大部分であとは「マイナス」か「少しだけプラス」といった具合ではないでしょうか。
実際に自分の大切なお金を使って投資をしたことがない人たちが
「投資とは!」
とかなんとか語っている傾向があります。
もうやめてほしいですね。
一般の人たちを”カモ”にして、それを利用して自分たちが金を稼ぐのは。