カモにするためにはあらゆる手を使う
『投信まとなび』の【長期投資のメリットは?回答】というページがあります。
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社の情報です。
ミスリードです。(サイトの図は定期預金としないといけないものを外国債券となっています。)
結果は、
積立総額:456万円
定期預金:772万円
積立投資:2,045万円
上記の結果についてこう書かれていました。
”配当や利息が再投資されたもので、投資する期間が長期になればなるほど、配当や利息の再投資による複利の効果が大きくなり、積立額を上回る傾向があります。”
つまり、投資をすすめているということですね。
ここで指摘しておかなければなりません。
このようなデータは新聞やマネー本でも多く見かけます。
しかし、「物価」や「時代背景」「為替」を無視した過去の机上論は全く意味をなさないということです。
それがわかっていないのであればおかしいですし、わかっているならやはりミスリードでしょう。
ミスリードのためのデータ作成は投資家のためにならないということを強く指摘します。
物価について
1970年~2007年という37年にも及ぶ”長期投資”は、1970年に生きていたある人が行ったという話になります。
想定しやすいのは、当時(1970年)大卒の23歳の新入社員が60歳(2007年)の退職時までの話となるでしょう。
さて、1970年度の大卒初任給はと言いますと?
約4万円です。(物価の文化史事典より)
イメージしてください。
約4万円の新入社員(働き始めた若者)がその25%も定期”預金”でなく積立”投資”にまわせるというのでしょうか?
現代に置き換えると、新入社員が約5万円を積立投資にまわすということです。
この時点で無理があるでしょう。
このデータを作成したイボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社の優秀な新卒社員(~ベテラン社員まで)はそのぐらいやっているというのでしょうか?
下図は、「郵貯等の金利推移」(㈱農林中金総合研究所 季刊 組合金融 2001年春号より)
このような時代にわざわざ海外投資しますか?しようと思いますか?
いまでもそうではないでしょうか?
あなたは定期預金の金利が5~10%あれば、あえて株式投資をしますか?
・・・・・・・・・あえて、しないでしょう。
する必要がないということです。
時代背景について
その時代に外国株式や外国債券などに投資をするという発想があったというのでしょうか?
1970年時代にインターネットがあったのでしょうか?パソコンがあったのでしょうか?
ネット社会の現代でも外国の情報なんて正確にとれないですが。
普通の国民がどのように情報を得れるというのでしょうか?
そもそも国内外問わず投資なんてする人がいたのでしょうか?
定期預金は5%ほどあった時代ですよ。
外国投資信託証券の募集または売出の届出等に関する大蔵省令が公布され、外国投信の国内販売が解禁されたのは1972年です。
そんな時代です。
為替について
下記の図(金プラチナ相場情報Let’s GOLDより)をご覧ください。
「金プラチナ相場情報Let’s GOLD」サイトにはこう解説されています。
日本円の対米ドル為替レートは、第2次大戦後1ドル=360円の固定相場制が続き、1971年12月のスミソニアン協定で1ドル=308円への切り上げを経て、1973年2月に変動相場制へと移行しました。
変動相場制導入直後に260円台まで下落した後、1973年秋のオイルショックをきっかけに300円近辺までドル高円安が進行。1970年代後半から徐々に円高が進行し、1978年末には180円近辺へ。
その後、ソ連のアフガニスタン侵攻などの地政学リスクによるドル高で1980年代前半にかけて250-260円の水準へ。そして1985年9月のプラザ合意でドル安誘導政策が決定すると急速に円高が進み、1986年末には160円へ。その後もドル安円高が進み、1987年2月のルーブル合意によるドル安の歯止めも効かず、1988年には当時の史上最安値となる1ドル=120円まで円高が進行しました。
日本では円高不況の対策として超低金利政策を推進したことでバブル期へ。1990年には160円近辺まで円安が進行。その後、バブル崩壊とともに1990年前半には円高が進行し、1995年4月には一時79円70銭台の史上最安値(円高)を更新。
1970年の為替は、1ドル360円です。
さらに為替(交換)手数料はいまより間違いなく高かったでしょう。
そんな時代に普通のサラリーマンが海外投資を考えるのでしょうか?
円安時にドル・コストで買い付けしていくとリターンは悪くなります。
口数買えなくなるからです。
投資分析をするなら将来もシミュレーションするべき
投資をすすめる業界は常に「過去」の結果をだすだけです。
「やっとけば良かったでしょう?」
「だから、これからやりましょう」
と言うために?
同じ時間をかけてデータを作成するなら、同時に「将来」をシミュレーションするべきでしょう。
「こうなればこういう結果になる」という様々なパターンを。
それをしない、できないのであれば、過去こうでしたって言って、投資をしたほうが良かった、投資をしたほうがいいというのは誰でも言えますからね。