「貯蓄から投資へ」の結果で破たんしていく企業年金
朝日新聞デジタル(4月27日)より
サラリーマンが入る厚生年金基金のうち74基金が今年度から来年度にかけて、深刻な積立金不足の基金に適用される「特例解散」をする方向で調整していることが厚生労働省の内部資料でわかった。解散を申請すると、公的年金である厚生年金は予定通り支給されるものの、これに上乗せされる企業年金は支給されなくなる。影響を受ける人は、年金の受給者と現役社員の加入者を合わせて約86万人にのぼる。
74基金には年金受給者が約45万人、現役社員の加入者が約41万人いる。厚労省の試算では厚生年金基金の企業年金は標準で月に約7千~1万6千円で、その分がカットされる。さらに多い受給者もいて、神奈川県のある基金幹部は「受給期間が10~20年になるので、もらえなくなる企業年金は最大で計500万円の人もいる」という。
朝日新聞は、厚生年金基金について厚労省がまとめた資料を入手した。資料によると、全国の527基金のうち、3月18日までに195基金が解散する方針を厚労省に伝えた。
朝日新聞社
厚生年金基金は、ある意味”欲”からはじまった制度です。
その仕組み上、リスクをとって運用しないと意味がないことになります。
厚生年金に資産を返さないといけませんから。基金分の上乗せ分の収益を得て。
厚生年金基金は、厚生年金の資産(保険料)を使って運用する仕組みです。
結果、リスクをとった運用で失敗したということです。
そして、この制度は国により事実上廃止されようともしています。
国家による「貯蓄から投資へ」が無残な結果です。
さて、厚生年金基金はいつからはじまったのかというと、昭和41年10月です。
長い歴史だということがわかります。
国による厚生年金基金制度廃止の影響
AIJの詐欺事件の影響もあり、厚生労働省は厚生年金基金の制度自体を廃止する方向に動いています。
廃止ということになると、基金加入者の掛け金が無駄になってしまう可能性があります。
現在基金から年金支給を受けている高齢者には、年7万円ほどの年金基金の支給停止がされるなどの影響もあります。
その人数は全国で約600万人以上といわれています。
すべての基金が廃止されるわけではありませんが、存続するためには責任準備金(厚生年金からの資産)の積み上げ(1.5倍以上)が必要です。
現実的には、1.5倍以上の資産を保有している基金は全体の10%ほどだということです。
この厚生年金基金の問題は、ズバリ国の責任といっていいでしょう。
バブル崩壊後にみるみる財政難になった基金をここまで放置していた罪はもちろんですが、「貯蓄から投資へ」ということで厚生年金保険料をカモにさせていったという現実。
そして、これから解散がされていくであろう90%の基金から大量の株式が売りにだされることが予想される株式市場。
巨額な売り物が想定されます。
受け皿は何か!?
国の動きを見ていればわかります。
GPIF(公的年金)
そして「貯蓄から投資へ」と煽られるNISAをはじめとした一般の個人資産というカモ
日本国民の資産が狙われているでしょう。
こわいですね。
すでに何度か言ってきていますが、いま世界の株式市場は「日米欧」とも歴史上、高い水準にあります。
日本については昨年、アベノミクスによる約40年ぶりに57%ほど上昇したという異常な過熱直後の状況です。
リーマンショックでわかった世界の投資市場の背景、そして世界の株取引はアルゴリズム超高速取引になっているという状況。
いまの時期、「貯蓄から投資へ」というカッコイイ標語につられることは、あなたがカモになる可能性が極めて大きいということを想定しておくべきです。