常識力が問われる積立投資話法

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宗教家や詐欺師というのは、騙すのではなく信じ込ませるということに長けています。
そして、情報というのは操作することによって、人々を”洗脳”していきます。

騙す人よりも騙される人のほうが悪いという世の中がいいでしょうか?
あなたは騙し合いのある世の中のほうがいいでしょうか?

たとえば・・・
「金融商品」を販売する人が、金融商品を騙して販売する

「住宅」を販売する人が・・・
「食」を販売する人が・・・
「医」「薬」を販売する人が・・・
「ブランド品」を販売する人が・・・
等々

自分の職業の専門外のことで、あなたは騙されたいですか?
先日、そのようなことを感じたことがありましたので、改めて巷間ある積立投資話法について書きたいと思います。

金融商品で投資行為というものをしたことがなかった人たちが、確定拠出年金をはじめ、その文言を目にする機会が増えてきています。
「投資信託で積み立てを」
「長期で積立投資を」
「複利効果で資産増」
というような文言です。

しかしながら、
「その説明・話法はひどすぎないか!?」
というものが多すぎです。
業界関係者も個人投資家も。
改めて指摘しておきます。

まるで積立投資をすればお金の問題が解決するかのような話

私は常々、積立投資というのは「平均買付単価と売却時の基準価額の差が評価益」だということを伝えてきています。
しかし、私と同じ主張をしている人を見聞きしたことがないということには驚愕しっぱなしです。

いつも見聞きするのは
「〇%の複利効果でこう」
「〇%の長期運用でこう」
と、下の図の棒グラフで示したような「投資累計額」と「時価(評価額)」を使って「どうだぁぁ!!」といったものばかりです。

上の図(毎月5万円の積立投資)は「5%」としています。
このような説明をする人たちは「5%」以上で試算してくる傾向があります。
理由はいろいろでしょうが、対抗商品である預金や保険商品よりも良く見せる必要があるからだと思います。
・販売手数料+信託報酬手数料を加味しても魅力があるように
・税金を考慮しても魅力があるように
・リスクをとっても報われると思わせるために

等々。

残念ながら、このような説明をする人たちとこのような説明を真に受けている人たちに欠けていると言わざるをえない視点があります。それは

毎月買い続けていくとされる価格変動商品の基準価額と平均買付単価の動きです。

つまり、上図の赤色実線と赤色点線の差がいかにして形成されていくのかという動きです。

仮に、毎月上昇し続けていくのならそれを追いかけていきながら平均はつくられていきます。
逆なら逆で。
上へ下へを繰り返すのなら、その間で。

上の図で示している通り、
「30年後の平均買付単価」(赤色点線)と「30年後のその投資対象の基準価額」(赤色実線)の差が2倍以上になっている動きはどのようなシミュレーションで可能なのでしょうか?
上の図は毎年5%の固定金利で数学の計算をしているだけですので、それ以外に。(毎年5%と平均5%は意味も結果も違います)

正直、
「積立投資は、平均買付単価と売却時の基準価額の差が評価益になる」
ということをわかっていない人たちが山ほどいるのではないか
、そしてその影響を受けての情報が拡散されているのだと思っています。
そうであれば不幸ですし、そうでなくわかっているのであれば、ほとんど騙しの世界だといえるでしょう。
そもそも、この話法の情報発信者は誰か?
結局・・・・・・・・・

30年は短いと思っている人たちがいますのでもっと長く

360か月(30年)のシミュレーションがいいのなら、その倍ほどの期間となる700か月(約58年)もいいでしょう。
上のシミュレーションそのままで、58年後の平均買付単価と基準価額を見てみましょう。

まず、700か月(約58年)後に投資元本3,500万円が2億円ほどになっています。
30年のシミュレーションの延長ですからそうなります。
1万円からはじまった基準価額も17万4千円になっています。しかし、700か月後の平均買付単価は30,300円と低いです。その差5.7倍です。
58年間、どのような買い方を毎月していけばそうなるのでしょうか? (・。・)
やはり「毎年5%」で基準価額が勝手に上昇していくからという回答でしょうか? 

【ご参考】
600か月後の平均買付単価:26,800円、600か月後の基準価額:116,000円(4.3倍)
500か月後の平均買付単価:23,400円、500か月後の基準価額:77,000円(3.2倍)
400か月後の平均買付単価:20,200円、400か月後の基準価額:51,000円(2.5倍)

真面目な話、どういう推移でこうなるのかをいくつかのパターンでシミュレーションしてほしいですね。
複数パターンのシミュレーションで確かに納得ができれば、「積立投資」よりも「一括投資」をしたほうが良いことに気づけると思います。
いま3,500万円ある人は、700か月後に6億円になっていますから。

しかも、納得できた時点で私たちの公的年金は一生安心と確信されるのではないでしょうか。
つまり、個人が老後資金を心配することはなくなるでしょうし、若いうちからローンで住宅を購入することも無意味になるでしょう。
個人消費が活発になり、GDPも増加していきますね。

将来ずっと長短金利は上昇しない前提なのでしょうか?

このようなシミュレーションが容認され、それを否定する業界関係者がほとんどいないのも滑稽です。
それが日本の金融リテラシーなのでしょう。
このようなシミュレーションになる経済環境であれば、その間に固定金利2%、3%、4%という金融商品が販売されている世の中になっていないのかね?
残念ながら、このようなシミュレーションで積立投資の説明をしているようでは、そのような想像力も働かないのでしょうけど。。。


将来、積立投資において大きく投資元本が毀損するようなことが続出すると、責任が問われてもおかしくはないでしょう。
あ、「長期投資なので、まだまだ先にきちんと結果がでますから、それまでお待ちを~~~」というオチなんでしょうね。

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