長期投資と時間分散の効果について

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長期投資における時間分散効果(※)には、「肯定」「否定」の両方の見解があります。

(※)投資期間が長くなればなるほどリスクが小さくなる。
投資の一年目は、最大値・平均値・最小値は大きくブレていますが、年数を経ていくごとにだんだんと平均値に収れんされていきます。これが長期投資のいいところです。

これは以前にも
「長期投資でリスクは減る」は大ウソ!!
でも「おかしい」と指摘していますが、先日ご相談業務において、お客様から上記のことについて販売者が次のように言っていたということを伺いました。

上がったり下がったりしながら平均値に収れんされていきます。ですので、リスクはほとんどないと言ってもいいでしょう。

だったそうです。
普通に思うのですが、その販売者は「期待リターン」ってどういう意味だと思っているのでしょうか?
期待リターンが過去の〇年間の算術平均として表されているのなら、説明内容と説明方法におかしさを感じるのではないでしょうか。

今、投資初心者の方々に投資をすすめる販売員(銀行員・証券員・保険員)は、こう言ってはなんですが素人に毛が生えたレベルの人たちが増加中です。
株屋と保険屋と銀行屋からの投資に関する知識・情報
長期積立投資は誰でも成功するらしいが本当か?
正直、投資(金融)教育ということが言われていますが、教育されないと(勉強しないと)いけないのは販売者側だと思います。

特に、販売者の中で業界に入って1年~数年程度の人たちや20代や30代そこそこの人たちが声高に「長期!」「長期!」って言っているのを聞くと、正直、何なのこの人たちって思ってしまうところがありますね。
不確実な世界では、謙虚さは必要です。(・_・)
もっと言うなら仕事で「嘘」をつくような人間にだけはなってはいけませんが、「嘘」を言っている人たちが少なからずいるのも確かです。
一般の人たちは、結局正しくない知識・情報によって”洗脳”されていっているのではないのでしょうか。

下図は、
「年間のリスク(標準偏差)はいつの時点でも20%とし、年率で見ていった場合」
のグラフです。


常識人であれば「おかしい」と気づくことがあります。

なぜ、年率にするのか!?
なぜ、累積にしないのか!?
長期であればリスクがないのなら、金融機関が普通にやるべきで、銀行はお金を貸してでもやらせるべきではないか!?
住宅ローンよりも長期投資ローンをすすめるべきではないか!?
いや、そもそも個人がやる必要がないのではないか!?

そのように普通に思いませんか?
そして、上記の販売者の「上がったり下がったり」という説明ですが、本当は

年間の「期待リターンが5%・リスクが20%」がずっと一定という想定であれば、30年後であっても「5%・20%」はかわりませんが、
このグラフは、累積リターンの標準偏差に平方根をかけ、それを年数で割ったものです。
ですので、年数に比例して必ずリスクは低減していくようになります。
参考程度に見ておいてほしいです。

ぐらいにしておくべきだと思うのですが、いかがなものでしょうか。

長期積立投資であれば「いつはじめても問題ない」も理屈としておかしい

長期積立投資でよく言われる「いつはじめても問題ない」というものもおかしいということに気づきます。

”長期視点”で資産形成・資産運用を見ていくのであれば、「いま」しなくてもいいというアドバイスも成り立つはずなんですが、残念ながらそのようなアドバイスは聞こえてきません。
常に「いま!」「いま!」です。

結局、
自分以外の他人に「いま」投資をしてもらいたいのは、自分が先に投資をしているからです。ニューマネーを待っているからです。
それだけです。
それが投資の世界です。

以前にも書きましたが、
「医療保険に入るぐらいなら、その掛け金分を自分で投資したほうがいい」
と言っているブロガーらがいます。
これも同じ理屈です。
他人が医療保険に加入していても自分には何一つメリットがなく、他人がたとえ毎月3千円でも投資にお金を使ってくれれば、自分にとってメリットがある
と思っているのでしょう。

思考が滑稽です。
ただ、それが現代のインターネット社会の利用方法なんですね。
”ネット”ワークビジネスです。

参考文献・HP

『資産運用の常識・非常識』(マーク・クリッツマン)
『証券投資』(ツヴォイ・ボディ、アレックス・ケイン、アランJマーカス)
『経営・ファイナンス/長期投資とリスクの時間分散をめぐる議論』(高橋文郎)
『長期運用とリスクの時間分散効果』(みずほ信託銀行 資産運用研究所 菅原周一)

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