医療保険と預金を比較する知ったかぶりたち

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ダイヤモンド・オンラインにこういう記事がありました。
この記事を書いていたのは、経済コラムニスト・大江英樹氏です。
以前、『書籍「生命保険の嘘」はウソとミスリード』で指摘した著者です。
その本と共著の後田亨氏とまったく同じ論法です。

仮に毎月5000円の医療保険に加入したとしよう。30歳から50歳まで20年間入り続けた場合、支払った保険料の合計は5000円×12ヵ月×20年で120万円となる。その人が50歳の時に病気で5日間ほど入院し、支払われる入院給付が1日あたり1万円だとすると、保険会社からは5万円が給付される。

それで、「あーよかった、よかった!保険に入っていたおかげで5万円ももらえた。助かったぁ」と思ってしまうのだ。これは本当に正しい感覚なのだろうか。筆者ならその5000円をずっと貯金しておき、貯めた120万円の中から5万円を支払う。その方がずっと合理的だ。仮に病気にならなければ、貯めた120万円は旅行にでも食事にでも、自分の好きなように使えるからだ。

 
この方々の考え方は、
保険料120万円(上記20年の試算)を払った場合、それと同額か、それ以上に給付金が支払われないものは「×」だというものです。
かつ
預貯金は他のものにも使えるというものです。

多いですよね。
これと同じようなことを言う人たちや彼らに影響を受けている人たち。

行動経済学を使ってミスリードする手法

まず、120万円払ったのなら120万円以上もらわないと許されないという考えについて。
あなた、ならびにあなたの親族関係者は、

金銭収支±ゼロ

で人生を終えることを目標で生きていますか?
そんなことができると思いますか?

また、日本人は過剰に貯蓄を行っており、それにより多額の資産をのこして亡くなっているという「過剰貯蓄」が問題にもなっていますが、この事実の本質を知らないのでしょうか?
(過剰貯蓄の理由は省きます)

大江氏は、よく「行動経済学がなんちゃらかんちゃら」と言っています。
記事の中でも『ヒューリスティック』『心の会計(メンタル・アカウンティング)』で医療保険のことを語っています。
大江氏の考え方でいえば、ホモ・エコノミクス(合理的経済人)の行動ものさしを使って、常に総資産ベースでの話をしていくことが正しいということになります。

たとえば、こんなイメージです。
「我が家の貯蓄残高は1千万円ある。今夜、スーパーで2,000円の買い物をした。残高は999万8千円だ。」
このようなものさしで生活をしろと言っているようなものです。

普通の人は、「心の会計」で暮らしていってまったく問題ありません。

預貯金なら旅行にでも食事にでも使える?

医療保険に毎月5千円払うくらいなら貯金にしましょう。仮に病気にならなかったら(=使わなかったら)旅行でもなんにでも使えます。
ごもっともですね。
それでは、ここで質問です。

①仮に病気にならなかったら、というのは「いつ」判断するのでしょうか?

②旅行や食事で使ってしまったらなくなりますが、そのあと病気になったらどうするのでしょうか?

③そもそも貯金ができなかったらどうしましょうか?

「心の会計」といいながら、「医療保険のかわりに行う貯金」という項目こそ、「心の家計」になります。
矛盾していませんかね?
また、行動経済学をいうのなら「時間選好」のことも考慮したほうがいいと思いますが、それは無視なんでしょうか?

貯金は
>自分の好きなように自由に使える
という、小学生でもわかるごくごく常識的なことを語っていますが、このような論法をミスリードだというのです。

保険のセールストークに騙されるな?

最後に、
この記事のタイトルは
「保険のセールストーク「高まるリスクに備える」に騙されるな」
となっていますが、
「経済コラムニストの「知ったかぶり」に騙されるな」
と指摘しておきます。

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